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振り込め詐欺や恐喝、ヤミ金融等の被害者が振り込んだ相手の預金口座等について、弁護士が被害者代理人として、金融機関に対し、預金口座等の取引停止や解約の措置を要請することがあります。
詐欺等の他人の財産に損害を与える犯罪では、犯罪者が、逮捕されることをおそれて、被害者と対面せずに財産を得るための方法として預金口座への振込を利用するということがすくなくありません。
そこで、被害者が、氏名も住所も分からない犯罪者からお金を取り戻すためには、犯罪者に指示されて振り込んだ際の振込先となった預金口座から取り戻すことが最も効果的であると考えられます。
しかし、犯罪者が振込先となった預金口座から出金したり預金口座を解約したりしてしまえば、被害者はもはや振込先となった預金口座から取り戻すことができなくなってしまい被害回復されません。
そのため、金融機関は、振り込め詐欺救済法(犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律)第3条1項に基づき、預金口座の取引停止等の措置をする場合があります。
振り込め詐欺救済法
(犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律)
第3条1項
「金融機関は、当該金融機関の預金口座等について、捜査機関等から当該預金口座等の不正な利用に関する情報の提供があることその他の事情を勘案して犯罪利用預金口座等である疑いがあると認めるときは、当該預金口座等に係る取引の停止等の措置を適切に講ずるものとする。」
また、全国銀行協会では、被害者代理人弁護士が日弁連の統一書式を利用して預金口座等の取引停止等の措置を求めた場合には、当該預金口座等が犯罪利用預金口座等である疑いがあるものと迅速に認定し、適切な措置を講じる取り扱いとしているそうです。
そこで、冒頭のとおり、振り込め詐欺等の被害者が振り込んだ相手の預金口座等について、弁護士が被害者代理人として、金融機関に対し、預金口座等の取引停止等の措置を要請することがあります。
なお、預金口座等の取引停止等の措置がなされると、一定期間経過後、下記サイトに掲載されて公告されるようになっていますので、疑わしい振込先口座についてはこちらで検索することも可能です。
では、振り込め詐欺(最も典型的な手口は「他人が息子になりすまして親にお金を振り込ませる」というもの)ほどの明らかな詐欺ではないものもある投資名目詐欺において、利用できるでしょうか。
振り込め詐欺救済法(犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律)第2条3号は必ずしも振り込め詐欺に限る等とは規定していませんので、利用できる場合があります。
振り込め詐欺救済法
(犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律)
第2条3号
「この法律において『振込利用犯罪行為』とは、詐欺その他の人の財産を害する罪の犯罪行為であって、財産を得る方法としてその被害を受けた者からの預金口座等への振込みが利用されたものをいう。」
ポイントは
預金口座が犯罪に利用されたと疑うことに合理的な理由があったといえるかどうか
であると考えられます。
例えば、以前、
投資名目被害(投資詐欺・CO2排出権取引被害)の解決方法の例
においても、「解決のポイント」の項目で「業者が利用している預金口座を把握し早期に口座凍結を行う」ことを挙げました。
従って、投資名目詐欺においても、被害者が振り込んだ相手の預金口座等について、弁護士が被害者代理人として、金融機関に対し、預金口座等の取引停止等の措置を要請すると、措置が講じられます。
もっとも、投資名目詐欺においては、振り込め詐欺(最も典型的な手口は「他人が息子になりすまして親にお金を振り込ませる」というもの)ほどの明らかな詐欺ではないものもすくなからずあります。
そこで、金融機関や弁護士は、預金口座等の取引停止等の措置を受けた口座名義人より、「詐欺ではない」等と主張されて、取引停止等の措置を解除するように連絡があることが、すくなくないようです。
さらに、金融機関や弁護士は、口座名義人より、損害賠償請求訴訟を提起する等と予告されたり、実際に訴訟の相手方(被告)とされて損害賠償請求訴訟等を提起されたりすることもあるようです。
さて、そのような場合、口座名義人(原告)より、訴訟の相手方(被告)とされて損害賠償請求訴訟を提起された弁護士は、損害賠償義務を負うのでしょうか、というのが次項で紹介する裁判例です。
判例タイムズ1384号(2013年3月号)
原告 高齢女性AからB銀行預金口座に振込を受けた者(口座名義人X)
被告 高齢女性Aから投資名目詐欺の相談・依頼を受けた者(弁護士Y)
※ 是枝が判示「第2 2 前提となる事実」及び「第3 当裁判所の判断 1 前提となる事実、証拠及び弁論の前趣旨によれば、以下の事実が認められる。」以下を基に適宜要約したものです。
被告である弁護士Yは概ね下記のような相談を受けた。
高齢の年金生活者である女性Aは、数年前に詐欺業者による未公開株商法により多額の被害を受け、その後も次々と同様の被害にあっていたため、いずれはその損害を回復したい等と考えていた。
すると、高齢女性Aは、複数の者から、被害を回復する会社としてC社を紹介され、C社からもC社の事業内容等が記載されたパンフレットが届いたこと等から、50万円分の社債を購入させられた。
さらに、高齢女性Aは、C社の担当者から、D社から2000万円の融資を受けてC社の社債を購入することを勧められ、D社の事務所等に呼び出されてD社の担当者らに言われるがまま多くの書類に署名押印させられたうえ、金融機関へ連れられてATMの操作を指示されて口座名義人Xを含む複数の預金口座等に送金させられたが、その後、高齢女性Aが過去の損害を回復することはなかった。
そこで、被告である弁護士Yは、詐欺であると判断して、その女性の依頼を受けて被害者代理人として金融機関Bに対し預金口座等の取引停止や解約等の措置を要請し、金融機関Bがその措置を講じた。
すると、口座名義人のうちの1名である原告Xは、金融機関B及び弁護士Yに対し、預金口座等の取引停止等の措置の解除を要望したが、金融機関B及び弁護士Yがこれを拒絶して解除されなかったため、全額返金を申し出るに至り、その後、原告Xが弁護士Yに対しX名義口座に対する振込金の全額を返金したため、弁護士Yは金融機関Bに対し措置の解除を要請し、金融機関は措置を解除した。
その後、口座名義人Xが弁護士Yを被告として損害賠償請求訴訟を提起した。
不法行為は成立しない
被告(弁護士Y)は、高齢女性Aの親族からの電話相談を受けた後、三度にわたって直接高齢女性Aと面談し、事実経過を把握するとともに、高齢女性Aが所持していた資料や面談後新たに入手した資料を精査し、その内容や高齢女性Aの認識していた事実との整合性を確認し、高齢女性Aの供述の正確性を確かめており、その調査に不十分な点があったとはいえない。
そして、高齢女性Aの供述する事実経過や被告(弁護士Y)が収集した各種資料を総合すると、本件口座が犯罪に利用されていると考えるにつき合理的な理由があったというべきであるから、被告(弁護士Y)が法三条一項に基づく措置を求め、本件停止措置を講じさせた行為は、違法とはいえない。
原告(口座名義人X)は、被告(弁護士Y)が、高齢女性Aへの融資に関与した登録貸金業者や司法書士に対し、原告(口座名義人X)による詐欺の有無等について、問合せ等を行うべきであったと主張する。しかし、そのような調査を行えば、本件口座の名義人に察知され、預金を引き出されるなどの手段が講じられて、法三条一項の措置による被害回復が不可能となるおそれがあるから、被告(弁護士Y)が上記の調査を行うべきであったとはいえない。
また、原告(口座名義人X)は、被告(弁護士Y)が、原告(口座名義人X)の登記事項証明書を取得すべきであったのに、これをしなかったから、被告(弁護士Y)の調査は不十分であると主張するが、同証明書を取得しなかったとしても、そのことから、被告(弁護士Y)の調査が不十分であったとはいえない。
本件の高齢女性Aからの相談内容は、被害者リスト(カモリスト)に掲載されている高齢者をターゲットにした劇場型・被害回復型という典型的な投資詐欺(利殖商法)被害を訴えたもの、でしょう。
※ なお、詐欺業者のなかには「被害者リスト(カモリスト)から消してあげる」という誘い文句を使う者もいますが、現実に詐欺業者間で多数流通している被害者リストを回収する等して被害者リストに被害者の氏名住所等を抹消することはおよそ不可能ですから、この誘い文句自体が虚偽であり、被害者リストを使って過去の被害者を新たに騙そうとしているということにほかなりません。
相談を受けた弁護士としては、被告とされた弁護士が実際にしたように、事実経過を把握し、相談者の相談内容と資料の記載内容等の間に不整合な点がないか等を確認することとになると思われます。
あわせて、振り込め詐欺救済法に基づく公告を検索して、既に口座名義人の口座について他の被害者代理人からの金融機関Bに対する預金口座等の取引停止や解約等の措置の要請がないか、確認します。
また、相手方業者のパンフレットやウェブサイトを確認したり、インターネットやクローズドな弁護士のメーリングリストでその投資名目詐欺業者に関する情報を収集したりすることもあるでしょう。
なお、法人であれば登記も念のため取得するようにしていますが、法人登記は誰でも比較的簡単に作成できるため、相手方業者が投資名目詐欺業者かどうかを判断するに際してあまり意味はありません。
また、先の展開を見越して、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)に対して弁護士法23条の2に基づく照会をしておくと、相手方が詐欺性を争ってきたときの一助になります。
本件では、前項(裁判例の「理由」に挙げたような事情がありますから弁護士Yの金融機関Bに対する預金口座取引停止等の要請等について不法行為は成立しないと判断されましたが、当然でしょう。
なお、口座名義人Xが弁護士Yを被告として損害賠償請求訴訟を提起するにまで及んだ理由が判決文からは明らかではありませんが、口座を第三者に無断使用されていた等の事情があったんでしょうか。
また、本件では、口座凍結(取引停止措置)が奏功したため原告名義口座に対する支払分については早期に全額回収できていますから、投資名目詐欺被害の解決としても素晴らしい事案だと思います。
実際には、投資名目詐欺業者は被害者に現金をエクスパック等郵送させたり入金後にすぐに出金してしまったりすることが多いため、口座凍結(取引停止措置)が奏功しないこともすくなくありません。
しかし、詐欺等の犯罪行為に対する数少ない強力な対抗手段の一つですので、迅速かつ丁寧な調査・判断を経て利用して、毅然とした対応を取って投資詐欺・投資名目被害の回復に努めたいと思います。
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