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投資詐欺被害の解決事例・コラム:目次

実在の排出量取引との比較にみるいわゆるCO2排出権取引商法における取引の架空性(2)

いわゆるCO2排出量取引商法の典型的なモデルと違法性


実在の排出量取引との比較にみるいわゆるCO2排出権取引商法における取引の架空性(1)


こちらは上記の法律コラムの続きになります


典型的なモデルの分類


いわゆるCO2排出量取引商法の典型的なモデルは複数挙げられます


市場仲介型(市場取引・取引所取引)

顧客の注文を市場に取り次ぐ等と説明して取引を勧誘するパターン


相対取引型(店頭取引・OTC取引)+差金決済取引(CFD取引)

顧客と業者の間で取引を行う等と説明して取引を勧誘するパターン


また、併せてカバー取引を行う等と説明されることも多いようです

なお、カバー取引というのは、例えば業者Bと他の業者Cの間で、顧客Aと業者Bの間の取引の都度、AB間と同じ内容の取引(但し売買ポジション真逆)を成立させる取引で、顧客Aに利益が出た場合でも業者Bに損失が生じないようにするためのヘッジ取引のようです


不明確型

書面では相対取引型を記載しているが、口頭では市場仲介型を説明して勧誘するパターン(あるいは、書面では市場仲介型を記載しているが、口頭では相対取引型を説明した勧誘するパターン)


CO2排出権取引商法において実際に多いのは不明確型のようです


以下、それぞれについて、順に紹介していきます


市場仲介型(市場取引・取引所取引)


市場仲介型(市場取引・取引所取引)

顧客が委託者となり業者が受託者となり、取引所の参加資格を有する者(メンバー)に顧客の注文を取り次いで、メンバーが取引所において不特定の市場参加者と顧客の注文に沿った内容の取引を行う


排出権価格や為替レートは排出権取引所や為替取引所で定まる

商品の受け渡し時期を将来の一定時点と定める

将来の一定時点までに取引所において不特定の市場参加者と反対取引を成立させる

実際は商品を受渡しをせずに代金を差金決済の方法で決済する


市場取引とは

市場取引とは、一般に、取引所において行う取引で、不特定多数の者のなかから競り合いによって条件のあった者の間でなされるもの


先物取引とは

市場取引において、商品の受け渡し時期を将来の一定時点と定める取引を、先物取引という


違法性(架空性・詐欺性)

実在の排出量取引における各取引所の参加資格を有する者が日本国内のCO2排出権取引業者を自称する零細事業者から注文の取次を受けることは現実的に考えにくい等、いわゆるCO2排出権取引商法は実際に実在の排出量取引を伴うものではないものと考えられます

なお、業者が取引関係書類にあたかも業者が実在のメンバーへ注文を取り次いでいるかのように記載していたものの、実際は取引以前の段階で既にその実在のメンバーが倒産により取引停止措置を受けて取引所の参加資格を喪失していた、という事例もあるようです


まず、各取引所の参加資格を得るのは容易ではなく、例えば、欧州気候取引所の参加資格を得るためには、厳格な要件があり、参加資格者は平成22年10月当時に世界で106社しかなかったようですし、現に、ICE Futures Europeのメンバーについて、大半は外資系金融大手のようで、日本企業としては日本の大手銀行、大手証券会社、大手商社くらいしか見当たらず、高いハードルがあるようです

次に、CO2排出権取引業者を自称する業者は、大半が、財務基盤が不明で日本国内でさえ金融商品取引業登録や商品先物取引業許可を受けておらず然したる取引実績もないような、零細事業者です

従って、日本国内に居住する個人を相手にするとしても、わざわざ零細事業者を相手にするとは現実的に考えにくいものがあります

厳密には、取引所までの取次先企業名や業者・取次先間や取引所における取引に関する資料や個別事情を基に判断することになります


いわゆるCO2排出権取引商法が実際に実在の排出量取引を伴うものではないにもかかわらず、実在の排出量取引を伴うかのように装い取引を勧誘すれば、詐欺にあたり、違法とされる可能性があります


相対取引型(店頭取引・OTC取引)+差金決済取引(CFD取引)


相対取引型(店頭取引・OTC取引)+差金決済取引(CFD取引)

顧客が買主(売主)となり業者が売主(買主)となる


排出権価格や為替レートは市場に準じた値を参照するとされる

商品の受け渡し時期を将来の一定時点と定める

将来の一定時点までに顧客と業者の間で反対取引を成立させる

実際は商品を受渡しをせずに代金を差金決済の方法で決済する


なお、業者と他の業者の間で、顧客業者間の取引の都度、顧客業者間と同じ内容の取引(但し売買ポジション逆)を成立させる、とされることが多い


相対取引(あいたいとりひき)とは

相対取引とは、市場を介さずに特定の者の間でなされる取引をいう


なお、相対取引において、商品の受け渡し時期を将来の一定時点と定める取引を、先渡取引という

また、相対取引において、業者Bと他の業者Cの間で、顧客Aと業者Bの間の取引の都度、AB間と同じ内容の取引(但し売買ポジション真逆)を成立させる取引を、カバー取引(ヘッジ取引)という


差金決済取引(CFD取引)とは

差金決済取引とは、商品の受渡し時期等を将来の一定時点と定めて取引を行い、将来の一定時点までに反対取引を成立させることで、実際には商品の受渡しを伴わずに代金の差額の支払だけを行う取引


例えば・・・


7/1に「9/30までに商品の受渡しを行う」等の商品先渡しの約束で顧客が業者から商品を7/1時点の参照価格30万円で買う
(顧客と業者の間で商品の受渡しはなされない)


8/1に顧客が業者に対し商品を8/1時点の参照価格35万円で売る
(顧客と業者の間で商品の受渡しはなされない)


8/1に顧客は業者より差額5万円を受け取る
(結局、顧客と業者の間で商品の受渡しはなされないまま)


違法性(賭博性・詐欺性)

以下のとおり、賭博行為に該当し、違法とされる可能性があります


すなわち、顧客と業者がそれぞれ互いに契約の当事者となって金銭の得喪を争う取引であること、商品の現物の交付ないし権利の移転を予定していない取引であること、差金決済の指標として業者と顧客のいずれにとっても予見することができないものでありまたその意思によって自由に支配することができないものを使用すること、現時点で金融商品取引法や商品先物取引法による規制がなかったことから、法令の根拠もないままに偶然の事情によって利益の得喪を争うものとして賭博行為に該当し、違法とされる可能性があります


また、実際は上記のとおり賭博行為に該当し違法とされる可能性があるにもかかわらず、真っ当な金融商品であるかのように装って取引を勧誘した以上、詐欺にあたり、違法とされる可能性があります


なお、他の業者(カバー取引先)とカバー取引をする等の説明についても、実在の排出量取引の参加自体に高いハードルがある以上、カバー取引先が実在の排出量取引に参加できない可能性が高いです


不明確型


不明確型は、市場仲介型か相対取引型かという取引の形態に関する基本的かつ重要な事項について虚偽を告知する等して不明確にして、取引を勧誘しているわけですから、その時点で違法性があります


業者としては、言い逃れを企図して、不明確にしているようです


すなわち、業者としては、顧客や弁護士等から、市場仲介型であるのに実際は市場まで顧客の注文が取り次がれていないと架空性を指摘された場合、書面によれば相対取引である等と言い逃れをしたり、相対取引型であるから賭博行為であると賭博性を指摘された場合、きちんと市場まで注文を取り次いでいる等と言い逃れをしたりすることができる等と考えて、あえてこのようにしているようです


不明確型について、架空性と賭博性の双方の指摘が妥当すると考えられますし、そもそも取引の形態に関する基本的かつ重要な事項について虚偽を告知した点で、計画的な詐欺であることが明らかです


補足(業者の勧誘文句について)


補足(業者の勧誘文句について)


ところで、業者の勧誘文句に次のようなフレーズがあった場合は、いわゆるCO2排出権取引商法の可能性が特に高いと考えられます


・国別登録簿(割当量口座簿)に搭載されています
・適格機関投資家等特例業務の届出をしました
・内容をきちんと説明しました
・必ず儲かります/元本割れしません


以下では、国別登録簿と適格機関投資家の届出について補足します


国別登録簿(割当量口座簿)について


国別登録簿とは、実在の排出量取引のうち国際取引の制度の下で使用されるものですが、地球温暖化対策の推進に関する法律29条以下を根拠として、国や国に申請した日本国内法人についてそれぞれの排出量の割当量を管理するための口座として開設されるものです

従って、国別登録簿は、現時点で、欧州連合域内排出量取引制度(EU ETS)と関係のないものです

さらに、国別登録簿における管理口座の開設は、国際取引をする前提として国際取引の記録を残せるようにするためのものであって、日本国内法人であれば原則として書面で申請するだけで出来るものですから、欧州の取引所における参加資格とは関係のないものです


国別登録簿
https://www.registry.go.jp/


日本国政府にクレジットの保有を承認された法人のリスト https://www.registry.go.jp/account_info.html


適格機関投資家特例業務の届出について


適格機関投資家特例業務の届出とは、金融商品取引法63条以下を根拠として、同法29条以下の金融商品取引業者の登録を受けていない者でも少人数の一般投資家を相手にファンド業務(少人数私募債)を行うことができるという特例を受けるための届出をいいます


届出ですので、登録や許可と異なり、簡易な手続で受けられます


従って、適格機関投資家特例業務の届出をしている業者は金融商品取引業登録を受けておらず信用力を慎重に判断すべきですし、適格機関投資家特例業務の届出は実在の排出量取引に関係ないものです


さらに、監督官庁である金融庁自身が、「下記届出をもって金融庁が届出者の信頼性を保証するものではありません」としたうえで、届出業者のなかには次のような悪質な業者がいる等としています


---引用開始---


「金融庁(財務局等)に届出を行い営業しております」などとあたかも金融庁(財務局等)公認の事業であるかのように強調するファンド業者がいます。

投資経験の乏しい者(高齢者を中心)に販売されているケースが見られます。

「今から紹介するファンド(匿名組合)に投資すれば必ず儲かる、(持分権利を)何倍もの価格で買い取る」と勧誘し、投資をすると、その後連絡が取れなくなる業者がおり、劇場型勧誘によるトラブルが目立っています。


---引用終了---


適格機関投資家等特例業者等 : 金融庁 https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/tokurei.html


適格機関投資家等特例業者に対する対応を強化!: 金融庁 https://www.fsa.go.jp/ordinary/tekikaku_kyouka/index.html


まとめ


以上のとおり、実在の排出量取引を紹介したうえで、実在の排出量取引との比較することにより、いわゆるCO2排出権取引商法における取引の架空性等についてできるかぎり具体的に言及してみました

実在の排出量取引における各取引所の参加資格を有する者が日本国内のCO2排出権取引業者を自称する零細事業者から注文の取次を受けることが現実的に考えにくいことだけでも伝わったら幸いです


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