福岡　投資詐欺被害取扱　弁護士　是枝秀幸

事例

※　事例は投資詐欺庁平成24年6月19日付NewsRelease（PDF）を参考にしたものです

相談者Ｘは、投資商品販売業者を自称するＹより、電話や自宅訪問で「ＣＯ２（二酸化炭素）排出権取引に参加すれば、必ず儲かるし、元本も保証される」などと勧誘を受けて、Ｙに数百万円を預けた

相談者Ｘは、半年ほどして、Ｙに対し、「預けたお金をそろそろ返して欲しい」と告げたが、Ｙは「相場が下がったため預かったお金は数十万円になってしまい、すぐには返金できない」などと述べた

結局、Ｘは、Ｙに連絡する度に、Ｙに「もう少し待ってくれ」等と先延ばしにされるだけで、未だに１円も返金を受けておらず、不信感が芽生えるとともに、少しでも多く回収することを希望している

解決目標

交渉や訴訟手続のなかで早期に任意に支払わせる

　または

強制執行手続で強制的に回収する

解決のポイント

業者が利用している預金口座を把握し早期に口座凍結を行う

口座凍結とは

口座凍結とは、一般に「金融機関の特定の預金口座等について金融機関が入金や出金などの取引を停止する措置」を言い、ここでは、振り込め詐欺救済法（犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律）第3条1項に基づく措置を言います

振り込め詐欺救済法
（犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律）
第3条1項
「金融機関は、当該金融機関の預金口座等について、捜査機関等から当該預金口座等の不正な利用に関する情報の提供があることその他の事情を勘案して犯罪利用預金口座等である疑いがあると認めるときは、当該預金口座等に係る取引の停止等の措置を適切に講ずるものとする。 」

お金を振り込んでしまった預金口座について、金融機関に口座凍結をしてもらうためには、被害者が警察や金融機関に届出をして、金融機関に「犯罪利用預金口座等」と認定してもらう必要があります

いわゆる振り込み詐欺やヤミ金など、「犯罪利用預金口座等」であるとの判断が容易なものであれば、被害者が自ら警察や金融機関に届出をして資料を提供するなどできれば、それで足りると思います

これに対してＣＯ２排出権取引等の「犯罪利用預金口座等」であるとの判断が容易でないものであれば、弁護士に依頼した方が比較的早期に金融機関に口座凍結をしてもらうことができると思います

なお、業者が会社であったり事務所を構えていたりする場合でも、こちらがＣＯ２排出権取引等の違法性に関する資料を提示すれば、金融機関は「犯罪利用預金口座等」だと判断してくれるはずです

振り込め詐欺救済法による口座凍結のメリット

・手続が比較的簡単で担保金も必要ない
・業者が第三者名義を用いていても口座凍結できる
・業者に他に資産があるかどうかも関係ない
・手続が順調に進めば預金口座のお金を受け取れる場合がある

振り込め詐欺救済法による口座凍結のデメリット

・口座名義人より損害賠償請求を受ける可能性がゼロではない
・実際の口座残高が分かるまで数か月かかる場合がある
・手続が公開されるので他の被害者と競合が生じる可能性がある
・他の被害者と競合した場合被害額で按分することになる

振り込め詐欺救済法による口座凍結の限界

例えば、振り込め詐欺救済法による口座凍結がなされた時点で業者が預金口座からお金を殆ど引き揚げてしまっていれば、預金口座から被害額に見合ったお金を回収することができないことになります

しかしながら、早期に資産を確保する有効な手立て、ではあります

振り込め詐欺救済法による口座凍結以外の方法による資産の確保

また、振り込め詐欺救済法による口座凍結がなされた預金口座以外から回収するための資産として、次のような資産が考えられます

・会社の保有している他の銀行預金
・会社の保有している他の資産（現金・有価証券・車・不動産）
・代表者の保有している資産
・勧誘した従業員の保有している資産

もっとも、あらかじめこれらの資産を確保するためには、仮差押えという手続を踏むことが必要で、裁判所に一定のお金を担保として預ける必要がありますし、手続も簡単ではありません

また、仮差押えは一時的な処分なので、実際にこれらの資産から回収するためには、判決を取り本差押え等に移行する必要があります なお、会社の実体がなくこれといった資産がない可能性があります

解決の手順

１　口座凍結を行い業者が使用している預金口座の出金を阻止する

１’　預金口座以外の資産を仮差押えする

２　交渉により早期に任意に支払わせる

３　訴訟提起・遂行により早期に任意に支払わせる

４　判決を取り強制執行（本差押え）を行い強制的に回収する

Ex　捜査機関と連携する

※　３の訴訟以降は代表者や勧誘した従業員も相手方に含める

１　口座凍結を行い業者が使用している預金口座の出金を阻止する

解決のポイントで記載したとおりです

なお、業者が会社であったり事務所を構えていたりする場合でも、こちらがＣＯ２排出権取引等の違法性に関する資料を提示すれば、金融機関は「犯罪利用預金口座等」だと判断してくれるはずです

１’　預金口座以外の資産を仮差押えする

解決のポイントで記載したとおりです

振り込め詐欺救済法による口座凍結がなされた預金口座以外から回収するための資産として、次のような資産が考えられます

・会社の保有している他の銀行預金
・会社の保有している他の資産（現金・有価証券・車・不動産）
・代表者の保有している資産
・勧誘した従業員の保有している資産

もっとも、あらかじめこれらの資産を確保するためには、仮差押えという手続を踏むことが必要で、裁判所に一定のお金を担保として預ける必要がありますし、手続も簡単ではありません

２　交渉により早期に任意に支払わせる

通知書の送付

口座凍結の直後、業者に対し、内容証明郵便で、主に次の事項について記載した通知書を送付し、交渉を開始することになります

・ＣＯ２排出権取引の違法性
・ＣＯ２排出権取引における寄託金の返還請求

ＣＯ２排出権取引の違法性

日本弁護士連合会平成23年12月15日付意見書などでも明らかです
ＣＯ２（二酸化炭素）排出権取引商法の適切な規制を求める意見書（PDF）

相対取引であれば賭博行為にあたるとされています
取次業務であればノミ行為にあたるとされています

賭博行為→賭博罪・常習賭博罪・賭場開帳罪・詐欺罪など
ノミ行為→商品先物取引法363条8号（212条）違反・詐欺罪など

いずれにしても違法です

なお、投資詐欺庁が特定商取引法違反でＣＯ２排出権取引業者に対し１２か月の業務停止を命じた例もあります
投資詐欺庁平成24年6月19日付NewsRelease（PDF）

ＣＯ２排出権取引における寄託金の返還請求

違法なＣＯ２排出権取引に勧誘した以上、業者や代表者や従業員は、顧客に対し、不法行為や会社法429条1項等に基づき、寄託金相当額について顧客が損害を受けたものとして、損害賠償義務を負います

違法なＣＯ２排出権取引は公序良俗に反し無効ですから、右取引においてなされた寄託も無効であり、業者は、顧客に対し、不当利得に基づき、寄託金全額について、返還義務を負います

交渉が長引きそうな場合は訴訟提起します

３　訴訟提起・遂行により早期に任意に支払わせる

訴訟手続において、裁判所にＣＯ２排出権取引の違法性を理解していただき、事案に即した適切な和解案で解決することを目指します

４　判決を取り強制執行（本差押え）を行い強制的に回収する

ここまで来てしまうと、後はいかにうまく業者や代表者や従業員の資産をみつけて強制執行をかけるか、という話になります

Ex　捜査機関と連携する

捜査機関と連携することで、業者から支払の提案があったり、捜査機関から必要な情報の提供があったりすることもあるようです